
いつものダイニングテーブルや、夜の静かな読書の時間。暮らしのさまざまなシーンで、私たちに寄り添ってくれるのが「灯り」です。
今回ご紹介するのは、作家たちが手がけたペンダントライト。素材そのものの美しさ、手仕事から生まれる柔らかな造形が、空間に特別な温もりをもたらしてくれます。プロダクトデザインにはない、使うほどに愛着が深まる個性豊かな「光」を、あなたの暮らしにも迎え入れてみませんか。

中矢嘉貴さん:自然の息吹を感じる、木の温もり
木工作家・中矢嘉貴さんが手がけるシェードは、木が本来持つ力強い表情をそのまま活かした唯一無二の存在感を放ちます。
特に「生木挽き」と呼ばれる技法で、ケヤキなどの木材の樹皮をあえて残した作品は、力強さの中に繊細な美しさをたたえています。点灯すると、木目や年輪が光に透け、自然素材ならではの静かな安らぎをもたらします。和室はもちろん、モダンな空間にも自然の息吹を吹き込んでくれるでしょう。

船串篤司さん:潔い造形と経年変化を楽しむ、大人の灯り
茨城・笠間で作陶する船串篤司さんのシェードは、潔い造形が特徴です。特に、マットな黒や、空気に触れることで味わい深い表情に育つ銀彩(ぎんさい)の作品は、確かな存在感で空間をモダンに引き締めます。シンプルでありながら力強い光の粒は、まるでアートピースのよう。経年変化という名の「育てる楽しみ」も味わえる、大人のためのペンダントライトは、玄関先やリビングの一角に、深みのあるアクセントを加えてくれます。

坂井千尋さん:静謐な美しさに、遊び心を添える「灯りの絵本」
陶芸家・坂井千尋さんのペンダントライトは、シェードに描かれた模様が、日々の暮らしにささやかな物語を運んでくれます。
シンプルなフォルムはどんな空間にも馴染みながら、そこに描かれるのは、猫のシルエットや木々のモチーフ。どこか素朴で愛らしい動物や自然の様子が、モノトーンの落ち着いた色調で表現されています。シェードの外側はもちろん、内側にも絵柄が施されており、点灯すると、光と影のコントラストで模様が立体的に浮かび上がります。一見クールなモノトーンの陶器でありながら、消灯している時も、その愛らしい絵柄を眺めるだけで、ふっと心が和みます。

阿部春弥さん:清潔感あふれる色と光、白磁・色釉の柔らかな彩り
長野・上田市で作陶されている阿部春弥さんの陶器シェードは、白磁(はくじ)やもえぎ色、瑠璃色などの色釉が持つ、清潔感と穏やかな彩りが魅力です。磁器特有のなめらかさがありながら、手仕事の温かさを感じさせる造形。点灯すると、釉薬の色を通して光が柔らかく広がり、食卓や洗面所などに優しい品を添えてくれます。単調になりがちな空間に、彩り豊かな安らぎをもたらしてくれる、暮らしの頼れるパートナーです。

安土草多さん:ゆらぎをまとう、手吹きガラスの灯り
岐阜・飛騨高山で作陶される安土草多さんのガラスのペンダントライトは、一灯点すだけで、まるで木漏れ日のような穏やかな空間を生み出します。
気泡や厚みのムラなど、手吹きガラスならではの「ゆらぎ」が、光を通して壁や床にやさしい影を落とします。まぶしすぎず、そっと空間のアクセントになる光は、ダイニングや玄関先にぴったり。夜のリラックスタイムも、より心地よいものにしてくれるでしょう。

大井寛史さん:光を透かす「蛍手」、清らかで幻想的な灯り
京都で作陶される大井寛史さんは、磁器・半磁器で端正なうつわを手がけます。特に、うつわに透かし彫りを施し、釉薬をかけて焼き締めることで、光を透かす「蛍手(ほたるで)」の技法を得意とされています。
この蛍手が施されたシェードは、点灯すると、小さな穴から清らかな光がこぼれ、まるで夜空にまたたく蛍のような、幻想的な美しさを空間にもたらします。透き通るような白磁や青白磁の清潔感と相まって、静かな雰囲気を演出。和室にはもちろん、モダンなリビングにも、静かな安らぎと透明感のある彩りを添えてくれるでしょう。

田井将博さん:レトロな表情とモールが生み出す「光の襞(ひだ)」
香川県で制作されている田井将博さんのガラスシェードは、どこか懐かしいレトロな雰囲気が魅力です。
ガラスを型に押し当てて模様をつける「モール」の技法で作られた作品が多く、規則的でありながら手仕事ならではの揺らぎを含む縦筋が、光を優しく波立たせます。シェードの縁には「輪花」のような装飾が施されたものもあり、その愛らしいデザインが空間に優しさを添えてくれます。
点灯すると、ガラスの表面にできた「光の襞(ひだ)」が、食卓やカウンターの上に穏やかな陰影の模様を落とします。まぶしすぎない20W程度の電球が推奨されているように、これは部屋を明るくする照明というより、「光の表情」を楽しむインテリア。夜、お気に入りの椅子に座って、その陰影を眺める時間は、きっと心安らぐひとときになるでしょう。

鈴木亜以さん:マットな質感とクリアな縁、光のコントラストを楽しむ
ガラス工房「floresta fabrica」で制作されている鈴木亜以さんのシェードは、ガラスの透明感を活かしつつ、異素材のような表情を持たせているのが特徴です。
モールなどの凹凸をつけたガラスの表面をサンドブラスト(砂を吹き付ける加工)でマットに仕上げることで、ガラスでありながら光を拡散し、非常に柔らかい光を放ちます。シェードの縁はあえてクリアな状態を残すなど、マットな部分とクリアな部分の光のコントラストが美しく、シンプルな空間に洗練されたアクセントをもたらします。
作家の思いと手仕事が宿ったペンダントライトは、大量生産品にはない、あなただけの特別な光。今日の暮らしに、この小さな太陽のような灯りを迎えてみませんか。



