炒り鶏

こんにちは。岳中爽果のパートナーのはじめです。

 

趣佳さん年末恒例の「お酒のうつわ」展にあわせての料理帖更新です。

2018年、2019年は実際にお料理を召し上がっていただいたのですが、2020年は残念ながらお料理の提供も料理帖の更新もありませんでした。

今年も何もないと少し寂しいので、料理帖だけは更新したいと思います。

 

実食がないことは寂しいのは寂しいのですけれど、展示に合わせてお料理を用意する必要がない分、割と気楽にレシピを紹介することができます。

 

コップの水がもう半分なのか、まだ半分なのか、それはどちらでもいいのかもしれません。何れの見方を取るにせよ、半分ある、ということは事実です。

 

今回は、一応は季節感のある料理ということで「炒り鷄」を紹介したいと思います。

 

炒り鷄

 

皆さん、炒り鷄は好きですか?

 

僕はあまり好きではありませんでした笑。

大抵、鶏肉の火の通し方が甘く、皮がぶにょぶにょのままで、単に根菜と混ぜて甘辛い味付けにしたもの、としか認識していませんでした。食べ物に好き嫌いはあまりない方だと思うのですが、しっかり火の通っていない鶏の皮と生の食感が残った玉ねぎは苦手なのです。

多分1970年代における小学校の給食のトラウマだと思います。鶏の皮を噛んだ感触を思い出すだけで辛くなります。

それが自分で作るようになって、今では好物になりました。そして僕は自分の作る炒り鷄が一番美味しいと思っています。

 

そういえば、塩肉じゃがのレシピ紹介の時に、僕にとって味の基準となる料理として肉じゃが、炒り鷄、ホワイトソース、トマトソースを挙げました。

炒り鷄は、レシピがシンプルな分だけ違いが際立つ料理だと思います。

 

具体的なレシピの紹介の前に、さらっと特徴を。

 

・鶏もも肉は薄塩して一晩冷蔵庫干しします。ラップなどはせず、バットに網を敷き、その上に乗せて冷蔵庫に入れておくのです。

・野菜の皮はむきません。

・人参はやはり金時人参の赤がいいです。

・椎茸は生を使います。

・だしは使わず、酒を使い、厚手の鍋で蒸し煮します。

 

道具

 

・バットと網 鶏もも肉1枚を広げて乗せられる大きさ。

・小鍋 こんにゃくの下ごしらえ。

・厚手の鍋 この分量だと、22cmル・クルーゼ(容量3.3リットル)にいっぱいになります。

 

材料

 

炒り鶏

 

・鶏もも肉 1枚(300g程度)

・鶏もも肉用の塩 2.4g

 

・こんにゃく 1枚(250g)

・ごぼう 1本(250g程度)

・蓮根 200g程度

・金時人参(西洋人参でも) 150g程度

・椎茸 大2枚

(彩りが欲しければお好みで。僕は炒り鷄に彩りをあしらいません)

 

・オイル 小さじ1程度

・砂糖 大さじ1

・酒 100cc(料理酒ではないもの)

・みりん 大さじ1.5(「みりん風調味料」ではないもの)

・醤油 大さじ3

 

鍋と材料と調味料の分量についての考え方

 

こういう煮物系の味付けとか鍋のサイズって割と難しいと思うので、僕の考え方を紹介したいと思います。

 

まず鍋のサイズの考え方です。

考え方というより経験則に近いのですが、この分量だと鍋の容量は少なくとも3リットルは必要です。煮込む前に炒めるので、混ぜることを考えると余裕を持った大きさが欲しいです。

恐らく4人前ほどになります。僕たちはいつも2回に分けて食べています。冷めると味が染み込むので、2回目の方が嬉しいくらいです。

 

次に材料と調味料の分量の考え方です。

材料の総重量は、鶏肉、砂糖、みりん、醤油を除いて1kg程度になります。この料理は最後に汁気を飛ばすので、仕上がりはもう少し軽くなります。鶏肉には最初に適量の塩をしているので調味料の計算からは除外します。

以前「じゃがいもの白和え(自家製塩麹と甘酒も)」で紹介した、醤油の分量の目安を覚えていますか?(復習です笑)

 

「しょうゆなら塩分濃度が15%程度なので、大さじ1杯のしょうゆは2.25gの塩に相当します。300ccの出しには大さじ1のしょうゆが丁度いい加減になります。」

 

ということで、醤油はざっくり大さじ3です。

(この歳になって「醤油」という漢字を書けるようになったので「しょうゆ」を「醤油」と表記を変えました。)

塩味はこれで決まるので、甘みをどの程度にするのかは好みの問題だと僕は思います。炒り鷄は根菜から旨味が出てくるので、甘みは控え目でいいのではないかと、僕は考えます。

 

ちなみに、なのですが、例えば600ccのだしをどう味付けるか、考えてみます。

これを全て醤油でやってしまうと、ちょっときついな、という感じがします。

僕は300cc分を塩2.4gで、残り300cc分を醤油大さじ1で、という具合に分割して考えます。具体的には、600ccのだしを塩小さじ1/2、醤油大さじ1で味付ける、ことになります。醤油の味や香りをどの程度欲しいのか、で按配してみてください。

醤油味って、別に全部醤油で味付けする必要はないです。

 

でも、砂糖とみりんの使い分けについてはまだ定見を持ちません。

砂糖は素材を緩め、みりんは締める、という違いは聞きますが、実感として使い分けの比率を語る水準にはまだまだ遥かなる道のりです。

そんなに甘くはないのです。

 

こんな風に材料の分量と鍋のサイズ、調味料の量を決めてもらえればいいと思います。ただし、量の多少に応じて加熱時間は異なってきますので注意してください。

 

手順

 

1)鶏もも肉の両面に重量比0.8%の塩をすり込み、冷蔵庫で干します。

やはり前日からのスタートです。

バットに網を敷き、その上に肉を乗せ、そのまま冷蔵庫に入れます。ラップなどはしません。

この時、僕はなんとなく皮を上にします。多分、水分が抜けやすいと僕は考えているからだと思います。皮を下にすると、肉を降りてきた水分が皮にたまりそうな気がします。理論的な裏付けはありません。「海は身から、川は皮から」からの連想でしょうか。

 

2)小鍋に湯(分量外)を沸かし始めます。

沸くまでの時間とこんにゃくを下ゆでしている時間で、具の下ごしらえをします。

「時短」ということではなく、「段取り」の領域だと思います。

 

3)こんにゃくをちぎります。

包丁は使わず、手でちぎることで断面積が増え、味がしみやすくなります。

僕は1枚250gのこんにゃくを24分割します。まず横に4等分し、各々をさらに6等分です。

湯が沸いたらこんにゃくを投入し、再沸騰すれば引き上げてざるにあげておきます。

 

4)ごぼう、蓮根、人参、椎茸を切ります。

ごぼう、蓮根、人参の皮はむかず、たわしで汚れを落とします。

たわしが必要なら今すぐ趣佳さんで買ってください。

ごぼうと人参は乱切り、蓮根は縦4つに切ってから、7-8mmに斜め切りします。

椎茸は軸を切り落とし、大きなものなら傘を半分に切ってから斜め切りにします。傘の部分は食感がいいし、縮むので、あまり小さくしないほうがいいです。

軸は縮まないので、小さめがいいです。僕は斜めに切り、傘に付いていた部分だけ縦に二つに切ります。

石突きは落としましょう(食べたいと思う人もあまりいないとは思いますが、お約束の注意。僕はこの注意を見るたびに頭上に設置された「頭上注意」の看板を思い出します。看板を見た人はすでに注意しているし、気づいていない人は頭をぶつけてからしか気づかない。結果とは無関係に、「手続きの正しさ」を追い求めるとこういうことになるのではないかと思います。脱線しました)。

色々切り方はありますが、各パーツの大きさが揃っていると火の通り方にムラがありません。

 

5)鶏肉を切ります。

一晩冷蔵庫で干した鶏もも肉は半ば皮が透けていると思います。

皮も切りやすいです。一口大に切ります。縮むのであまり小さくしないほうが僕は好きです。

特段注意事項はないのですが、定規で測るような切り方ではなく、もも肉が求めるように切るといいと思います。

以上で包丁とまな板の出番は終わりです。洗って片付けましょう。

 

6)具を炒めます。

鶏をじっくり、そしてごぼう、蓮根、人参、椎茸、こんにゃくの順に炒めます。

この一文に全て詰まっているので、じっくり読み解いてください。

 

7)念の為、敷衍します。

弱めの中火で鍋を温めてオイルをひき、オイルの表面がゆらゆらしてきたら皮を下にして鶏を入れます。鶏は最初に単独でそれだけで食べられるくらいしっかり火を通します。よく言う「色が変わったら」ではありません。

しばらく触らず放置します。時折菜箸の先でつついて皮がひっつかないようにします。8分目程度まで白い部分が上がってきたらひっくり返して反対側にもさっと火を通します。

続いて野菜を加えます。火力を中火程度にあげます。

火の通りにくい順に加え、都度混ぜます。全部一緒に加えないでください。

具が全て入ったら、砂糖を加え、よく炒め合わせます。

鍋全体がしっかり温まるまで炒めてください。

 

8)調味して煮込みます。

鍋の温度がしっかり上がったら酒を加えて煮立たせます。鍋の温度が上がっているのですぐに沸くと思います。

料理酒は使わないでください。普通に飲める日本酒でお願いします。2リットルパック1,000円程度のもので十分です。僕は原料が米だけのお酒を使います。晩酌に飲むお酒を使うと、晩酌がもっと美味しくなってしまいます。困ったものです。

酒が沸いたら、みりん、醤油を加えて混ぜ、蓋をして弱めの中火に戻し、10分煮込みます。

 

9)水気を飛ばします。

10分ほどして湯気が勢いよく出てきたら蓋を取ります。具にはすでに火が通っていると思います。水気が思いの外あると思うので、そのままの火加減で水気を飛ばしていきます。

10分程、時々混ぜながら煮汁が底に残る程度まで煮詰めます。

 

10)できれば温度が少し下がるまで置いておくと味がしみます。

 

11)盛りつけます。

 

炒り鶏

 

爽果さんの白っぽい独楽形鉢がお料理を引き立ててくれるのではないかと思います。

今回の酒器展で準備しています(笑、でも点数少なめ)。

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