の、むこう。靴と歩む

お店番スタッフおーた企画の第6回目のその2です。
さいとうさんに乗せられ、とうとう太田も私物を公開!
その1の靴の写真のかっこよさに刺激を受け、再三撮り直しましたが…
革のよさ、伝わるでしょうか?!
革靴についての愛が止まらない、おじさん2人の偏愛トーーク。
どうぞ、よろしくお願いいたします。(店主)

– その1 靴を履くはこちら –

 

お店番おーたと主夫さいとうが交わす、趣佳とはほとんど関係のない話を不定期にお届けします。

暮らしにまつわる話が中心なので、全く関係がないわけでもない(という願いも込めて)ということで「の、むこう。」という名前にしました。

おーたの「これ、どうなんでしょう?」という大して意味もない質問に、家事好きさいとうが無駄に真剣に語ります。真剣ではありますが、趣佳のことはあまり念頭にありません。

さいとうは家事好きですが、別にカリスマでもスーパーでもないので、これを読んで人生が変わることも、運が向いてくることもないと思います。
多分。

 

第6回 靴と歩む その2 靴を選ぶ

おーたさん

その1「靴を履く」では、人の足元を見てしまうさいとうさんの性癖から見えてくる、靴との付き合い方=人柄という話を伺いました。
その2「靴を選ぶ」では、そもそもどういう靴を入手するのか、というテーマについて話を聞きます。

さいとうさん

ぼくは別にメーカーやブランドに関心があるわけではなく、むしろ疎いです。
だから、今回もそういう方向の話ではありません。

おーたさん

織り込み済みです。

さいとうさん

入手にあたってのおーたさんの基準はどういうものですか?

おーたさん

「修理に出しても恥ずかしくないもの」を入手するようにしています。
若い頃、会社の先輩がかかと修理に出していた靴を受け取るのについて行って、ピカピカになって戻って来た靴を見た時、僕は靴磨き、あるいは靴を手入れするという価値観に初めて出会いました。
とにかく靴を何度も修理に出してハードに履きながらも大切にするって行為にしびれました。
それまでは履き潰すって感覚でしたので。

さいとうさん

修理を前提とした選択です。

おーたさん

チャールズ皇太子がエドワード・グリーンの靴なんかを何度も何度もリペアをしながら
何十年も大事に履いてるって話は大好きですし、日本でもそんな文化が根づけばいいなあって思ってました。

さいとうさん

靴との付き合いの歴史では英国には敵いません。
敵わないながらも「靴を選ぶ」ことについて語ります。

さいとうの語り:「靴を選ぶ」ことについて語ります。

その英国の格言らしいのですが、大地と自分の間にある物、具体的には靴、椅子、ベッドは最良のものを選べ、という言葉をぼくは信じ、実践してきたつもりです。

『天空の城ラピュタ』でシータが言っています。
「土から離れては生きられないのよ」
その通りです。
だからこそ、自分の身体の代わりに土と接する物は慎重にいい物を選ぶ必要があるのだと思います。

一方で、ビジネススーツを日常的に着用していた時は、靴を値段で選んでいました。
矛盾するようですが、「基準内における最良の選択」ということを意識した結果です。
「制約の中にこそ自由がある」、と言い換えてもいいかもしれません。

スーツ姿の一点豪華主義は恥ずかしい、調和が重要だ、という考え方があります。
調和というのはこの場合価格比のことで、具体的には、スーツが10ならワイシャツは2、靴は3-4程度が適正だという基準に従っていました。ネクタイは1か2だったような気がします。
今となっては比率はうろ覚えです。

「お前の為にチームがあるんじゃねぇ。チームの為にお前がいるんだ!!」(『スラムダンク』22巻、安西先生)ということだと思います。
スーツ姿として完成させるために靴があるのであって、靴を履くためにビジネススーツを着用しているわけではない。

おーたさん

さいとうさんは今ではビジネスシューズは履いていないし、冬場でもサンダルで過ごすというタイプでもなさそうです。
普段の靴はどうしているんですか。

さいとうさん

その1「靴を履く」で紹介した通り日常的に4足を履いています。いずれも革製です。
東京墨田区の製靴会社製ブーツを色違いで2足、長野県安曇野で個人が作られているハイカット、イスラエルのメーカーのつっかけタイプのものです。
ブーツは20年来の付き合いで、靴底を各々3回くらい張り替えてもらっています。ハイカットもつっかけも8年履き続けています。

おーたさん

さいとうさんも革派ですか。

さいとうさん

おーたさんもですね。

おーたさん

僕は今ではスニーカーばかり履いていますが、昔は革靴至上主義的な感じで、革靴ばかり、しかも鏡面仕上げしたブーツばかり履いていました。

の、むこう。靴と歩む

さいとうさん

鏡面仕上げって、磨き上げてピッカピカにする仕上げですか?

の、むこう。靴と歩む

おーたさん

まあ、そんな感じです。履いたことはないですか?

さいとうさん

ないです。
それにしてもピッカピカに磨き上げた革ブーツは目立ちますね。
靴に特定の好みはあったのですか?

おーたさん

靴を扱っていた頃、JMウェストンというフランスの靴を履いていました。
製法的にはクラッシックでしっかりした作りなのですが、イギリスのジョンロブやエドワード・グリーンなどの質実剛健優先の靴に比べると細身でスマートな靴でした。
趣佳の手伝いで、その靴を履いて作家の個展や工房などに同行すると、店主岩金のパートナーは先の尖った靴を履いていると、何故か「やや」馬鹿にされるということがありました。

の、むこう。靴と歩む

 

さいとうさん

確かに尖っています。これは目立つし、否応なしに記憶に残ってしまいます。

おーたさん

JMウェストンの名誉のために言いますが、若いお兄さんが履いている安っぽい尖った靴じゃないのです。
でも、一緒にされて嫌になってそのあたりからスニーカーも履くようになった記憶があります。

さいとうさん

今やお店番として立っての接客時間が長いと思うのですが、そういう観点から趣佳さんおすすめの靴はありますか?

おーたさん

さいとうさんもようやく趣佳のことを気にしてくれるようになりました。
では、遠慮なく宣伝させていただきます。

さいとうさん

いや、そういうわけでは…。

おーたさん

前回はドイツで生産されているトリッペンをご紹介しましたが、今度は国産。AROAという医療用シューズの靴底を使って作られた革靴です。僕のオススメはブラックソールですね!革のこだわりについてもホワイトソールとは少し違います。

さいとうさん

しっかり宣伝しましたね。
でも、全てがここに至る布石と考えられるのも本末転倒なので(あくまで本文が「本」だと思っている)、話を変えましょう。

おーたさん

そうですね。もう目的は果たせたのでご自由に。

つづく

タイトルイラスト:小林あつ子
https://atsukokobayashi.tumblr.com/

 

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