第5回:風呂を洗う

お店番スタッフおーた企画の第5回目です。
今回はさいとうさんの苦手…ではなく、好きの度合いが極端に低いだけの風呂掃除について。
好きの度合いが極端に低いだけのわりに手をかけてらっしゃる…
途中、なにやらわたしの名前もでてきますが、今や掃除をしてもらってる身分ですので異論はございません。
家事と道具についてのおじさん2人のゆるトーーク。
どうぞ、よろしくお願いいたします。(店主)

 

お店番おーたと主夫さいとうが交わす、趣佳とはほとんど関係のない話を不定期にお届けします。

暮らしにまつわる話が中心なので、全く関係がないわけでもない(という願いも込めて)ということで「の、むこう。」という名前にしました。

おーたの「これ、どうなんでしょう?」という大して意味もない質問に、家事好きさいとうが無駄に真剣に語ります。真剣ではありますが、趣佳のことはあまり念頭にありません。

さいとうは家事好きですが、別にカリスマでもスーパーでもないので、これを読んで人生が変わることも、運が向いてくることもないと思います。
多分。

 

第5回 風呂を洗う

の、むこう。風呂を洗う

おーたさん

さいとうさんは家事好きという設定ですが、家事といってもいろいろあります。
嫌いな家事、苦手な家事はないのですか。

さいとうさん

おーたさん、「設定」ではなく、ぼくは家事が好きです。嫌いな家事なんてありません。
家を整えておくことは大切なことです。
僕にとって「家事」と「嫌い」は論理矛盾です。
苦手な家事も特にないです。
苦手は克服すればいいのです。

おーたさん

付け入る隙がなさそうです。
じゃあ、あまり好きではない家事は何ですか。

さいとうさん

おっ、そうきましたか。
敢えてあげれば風呂掃除です。
言っておきますが、嫌いじゃあないんですよ。好きさの度合いが極端に低いだけです。

おーたさん

その違いがよくわかりませんが、実は宅ではお風呂掃除は僕の担当で、僕も嫌嫌やってます。
そういうわけで今回のテーマは「風呂を洗う」です。
さいとうさん、風呂を洗うってどうなんでしょう。

さいとうさん

そんな。
人の弱みにつけ込むような。

おーたさん

今、弱みって言いました?
苦手の克服ができるさいとうさんなら、あまり好きではない風呂掃除についても語れそうです。

さいとうさん

あまり好きではない、ではなくて、好きの度合いが極端に低いだけです。

おーたさん

時々は大人として好きではない分野にも挑戦しなければならないのです。

さいとうさん

そういうのは未来のある子供の仕事です。
好きでもない面倒なものをくぐり抜けてきた大人は、ひたすら自分の好きなものを求めればいいのです。

おーたさん

まあそうなんですけど。
いつもいつも自慢そうに家事について話している姿を見ていると、やはり、どこか胡散臭い感じがしませんか。
今日はそういう胡散臭さを解消するためにあえて好きではない分野について語ってもらいます。

さいとうさん

・・・。

おーたさん

まずはさいとうさんのお風呂掃除の仕方を教えてください。
僕もこだわるべきところを勉強したいと思います。

さいとうさん

諦めました。
では、お風呂掃除について語ります。

さいとうの語り:日常のお風呂掃除について語ります。

いたって簡単です。
道具はマイクロファイバークロス、ティッシュペーパー、時折棕櫚のたわしと洗濯用石鹸に古歯ブラシです。
「時折」と言っているのは、床を掃除するときに使うだけです。
排水口のつまり防止には粉末の酸素系漂白剤を使います。

普段の掃除に洗剤の類は使わず、マイクロファイバークロスだけで済ませます。

残り湯でクロスを湿らせ、洗い場の水栓、シャワーホース、浴槽のふた、窓、特に窓の縁のパッキン、ガラスの扉、扉の下、鏡、浴槽の外側、その下の床との境目を拭き掃除し、最後に浴槽を拭き掃除します。
残り湯を排水している間に全て済ませるので、大して時間はかかりません。

浴槽以外のこれらの場所を特に拭き掃除しているのは、放って置かれがちだし、放っておくと黒い汚れ(かびともいう)がつきやすいからです。
一度意識して掃除してみてください。すごいことになると思います。
でも、毎回さっと拭き掃除しておけば、黒い汚れ(かびと認めてしまえ)がつくこともないです。

最後にクロスを湯洗いし、風呂場全体に水をかけて流し、排水口の髪の毛などをティッシュペーパーで取り去って終了です。
髪の毛を伸ばし始めてわかったのですが、僕の希少な髪の毛の行く末を意識してしまうこの作業が精神的に一番辛いかもしれません。
「見える化」というのは僕の嫌いな言葉の一つで、実にいやらしい感性だと思います。
どうしようもないものを見せられても、どうしようもないじゃあないですか。

クロスはそのまま洗濯にだします。
シャワーの水温を水から湯に戻すことを時折失念し、パートナーに叱られています。

そのクロスは2ヶ月で交代するので、最後に、いつもは掃除しない場所、例えば、窓のレール、扉の防水用ゴムの裏、扉の底、同じく扉上部の換気用の穴などを徹底的に拭いて寿命を迎えます。
よく働いてくれました。

おーたさん

普段の掃除では洗剤は使わないんですね。

さいとうさん

以前は住居の掃除には浴槽も含めセスキ炭酸スプレーを使っていたのですが、床の無垢材が変色してしまうことがわかったので使わなくなりました。ちょっと残念です。
その代わりに使い始めたのがマイクロファイバークロスです。
おーたさんも風呂掃除は担当だけれど、嫌嫌やっていると言っていました。
どんな具合ですか。

おーたさん

折角なので、「おーたの実践」ということで紹介します。

おーたの実践:お風呂は素っ裸で洗うに限ります。

お風呂掃除!!!
なんのこだわりもなく嫌々やってます。
最近でこそ少し浸かるようになりましたが、もっぱらシャワーでチャチャッと済ますタイプなんです。
銭湯とか温泉に行くとしっかり楽しみますが・・・。

なので一時は浴槽を使わない僕が浴槽を洗う理不尽に憤ってました。
慣れとは恐ろしいもので最近では疑問も憤りも湧いてこないです^^;
洗剤もカビキラー的なやつもこだわりは無く用意されてるのを使ってます。

唯一のこだわりというかなんというかは、素っ裸で洗うってことですね。
掃除後はその流れでシャワーを浴びます。
冬は修行感覚になります。
今の季節はまだ快適です。

さいとうさん

全裸掃除ですか。この季節は良さそうです。
これにちなんでおーたさんから貴重な画像をいただいているのですが、残念ながら掲載は差し控えさせて頂きます。
気になる方はミケランジェロのダビデ像でも脳内再生してください。

おーたさん

残念です。

さいとうさん

実に。
それにしても、どうして風呂掃除がおーたさんの担当なのですか?

おーたさん

ずっと店主岩金の仕事だったのですが、どうも満足できずついつい手を出してしまいました。

さいとうさん

「清掃系の家事」は汚れを気にした方が「負け」です。ぼくはパートナーに勝ったためしがありません。
彼女は汚れを見ないし、見ても気づかないし、気づいても気にならないのです。
people hearing without listening.
サウンドオブサイレンスです。静寂の音です。
汚れる前から汚れたらどうしようと心配しているぼくが勝てるはずがありません。

おーたさん

勝つ可能性を微塵も感じることができません。

さいとうさん

我が家では風呂の残り湯を洗濯に使っていて、洗濯と風呂洗いが切り離せない関係にあります。なので、僕が通勤していた時から、朝はまず洗濯機を回してから風呂を洗う、というルーティンでした。

おーたさん

せっかく通勤がなくなったというのに、思いがけない影響が残るものです。

さいとうさん

風呂洗いも洗濯物干しも僕の方が質が高いのですが(乾いたときのタオルの風合いが明らかに異なります)、両方ともこなす時間の余裕は僕になく、いずれをパートナーに任せるか、という苦渋の選択の結果、清掃系を僕が担当したのが今に続いています。

おーたさん

二人とも潔く負けを認めるしかないと思います。
「時折の掃除」について聞かせてください。

さいとうさん

床と排水口の掃除ですね。
床掃除は、濡らしてから洗濯用石鹸をふりかけ、棕櫚のたわしで洗います。ピンポイントの汚れは古歯ブラシを使います。洗濯用石鹸は汚れがよく落ちます。普段の洗濯に使っているので流用です。
排水口には粉末の酸素系漂白剤をふりかけてからお湯を注ぎ、30分ほど待ってお湯でよく流します。つまり防止のためにしていることですが、排水口も綺麗になって気分がいいです。

おーたさん

これだけ聞いていると、どうして風呂掃除が好きじゃないのかよくわかりません。
どういうところが好きじゃないのですか。

さいとうさん

好きの順番が低いだけです。
語っている間に考えたので、風呂掃除の好きの順番が低い理由についてさらに語ります。

さいとうの語り:風呂掃除の好きの順番はなぜ低いのか。

風呂掃除についてはメソッドも一応確立していますし、苦手意識もありません。それでも、一日の家事を好きな順にしていると、風呂掃除がなぜが後回しになってしまいます。
どうしてなのか、僕にも不思議です。

地味というのは確かだと思います。でも別に僕は派手なものが好きなわけではないです。
どちらかというと他人がつまらないと思っている物事から密かに楽しみを見つけるタイプだと思っています。

自分の感性には限界があると思うので、ちょっと視野を広げてみます。

料理は文学のネタになっても、風呂掃除はなかなか難しそうです。
風呂掃除も銭湯のサイズにでもなれば別で、映画の一コマにも切り取られています。
Size does matter. です。

風呂についての愛を語る文学、風呂から愛を告げる歌はあります。
風呂での過ごし方、風呂の設計も文学や音楽や漫画の題材になっています。
でも、風呂洗いに関する文学も、歌も、映画も寡聞にしてぼくは知りません。
時代劇でも、風呂を薪で沸かす場面はあっても(旦那、湯加減はいかがでしょう?)、風呂を掃除している姿は見かけません。
ドラえもんのしずかちゃんも、水戸黄門のお銀さんもお風呂好きですが、お二人が風呂掃除をしている姿は知りません。

仮説として、風呂掃除は他人に語るべきことがないから、ということを考えてみます。
でも、ぼくは語っています。語ることはあります。

聞きたがる人はでも、おーたさんのように特殊な興味でも持っていない限り、いないかもしれません。
誰も聞いてくれない話を続けるのはさみしいものです。

そんなわけで

おしまい

おーたさん

いえ、終わっていません!

さいとうさん

まだ何か?

おーたさん

風呂掃除でさいとうさんが使われている棕櫚のたわし。
趣佳でも取扱がはじまり、たいへん好評です!
より違いをわかってもらえるよう、パームやしのたわしも入荷!

さいとうさん

こんなテンションが低い時に宣伝ですか。
風呂掃除から商品の宣伝に展開するなんて、さすがプロです。

おーたさん

いえいえいえいえ!本心です。
カラフルな色が気分をあげてくれるはしもとなおこさんのバスタオルもおすすめです!

さいとうさん

しっかり宣伝しましたね。

おーたさん

まだまだ風呂の全裸掃除には快適な季節です。
さいとうさんも頑張って掃除してください。

ほんとうに・・・おしまい

タイトルイラスト:小林あつ子
https://atsukokobayashi.tumblr.com/

 

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